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ヒロインはもとはイイトコのお嬢様

稲鴇きの娘は、身分違いの若君に見そめられたのだろうか。労働に疲れた手を、若君がとって、ため息をつきながら、優しく撫でさする。そんな光景が目に浮かぶ。いま思うと大学時代の男のセリフも、そういう愛ある気持ちから発せられていた気もするが、確かめようもない。そういえば中世の『御伽草子』の「鉢かづき」でも、虐げられたヒロインは、その手を若君に愛でられ、幸せになっている。ヒロインはもとはイイトコのお嬢様だったが、母が死に際、観音様のお告げだからと、頭に載せた鉢がそのまま頭にくっついてしまう。彼女は新しく来た継母に虐待され、父に捨てられる。そして三位中将の風呂焚きに落ちぶれるのだが、ある日、屋敷の末の若君が、彼女の品の良いこと、着物の裾から垣間見える“手足の美しさ”を不思議に思う。それで湯殿に入るよう命じ、間近でその優美さを確信。「紅の色はさめることはあっても、あなたへの思いはさめぼしない」と口説く。
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