ブランドショップに行列を作る人にも、同じことが起きるはずだ。行列という現象は、満員電車と同様に、現代社会における個人のおり方のひとつの象徴でもある。個人は集団の中に埋没し、名前と個性を持った人間としてではなく、何百人とか何千人という数の構成要素として扱われる。匿名の個人として現代社会を生きるのは気楽ではあるだろうが、人はそれだけでは生きていけない。何万人の中の1人であっても、感情と個性を持つ1人の人間だからだ。「ありがとう」という心のこもった一言に、ふと涙をにじませるのが人間なのだ。いつものレストランやいつものブティックで心がなごむのは、そこにはマニュアルの挨拶ではない本物の会話があるからだ。行列がエンターテインメントになり得るとしても、それは一過性のものだ。けれどコミュニケーションとしての買い物は、人類がこの地球上に生きている限り続いていデパートの包装紙が、贈答品の価値を高めた時代があった。日本橋三越で買うということが、買い物の付加価値になったのだ。インターネットショッピングモール時代には、店主とお客さんとのコミュニケーションが、“パートの包装紙”の代わりの買い物の付加価値になり得るのだ。生活を豊かにするための消費が増加していけばそれだけ買い物にコミュニケーションが求められるようになり、そのコミュニケーションが得られた時に、買い物はエンターテインメントとしての意味を持つようになるのだ。
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