いつの日かファッション・ヴィクティムが、新たに買う服の一着一着にまつわるささやかな歴史を掘り起こす労も厭わない、本当に意識が高い消費者になる時が来ることを祈ろう。ただし、現状から察するに、それは容易なことではないようだ。一九九八年、UCLAの一年生だったアーレン・ベンジャミンは、キャンパス内の売店で買ったフルーツ・オブ・ザ・ルーム(アメリカの最大手のアパレル・メーカーの一つで、Tシャツ製造の老舗。アメリカンテイスト溢れるシルエットと質感のTシャツを多色で展開)のシャツがどのようにしてできたかを調べ始めた。まずは本社に電話をしたが埓が明かなかったため、人権活動家である母のメデアとともに、ホンジュラスへと旅に出た。ふたりは、この地域でフルーツ・オブ・ザ・ルーム製品を作っている工場を五つ突き止めたが、皆、けんもほろろのあしらいである。結局、地元の組合のリーダーたちと話をして、やっとスウェットショップの恐怖の実態を少しばかり聞き出すことができたのだった。こうしてはるばる調査に出かけたベンジャミン親子にも氷山の一角しか見えなかったのだから、普通の消費者がいかに無知であるかがわかろうというものだ。