このような東京の一無名セミプロバンドの楽曲が、なぜ半年で182曲もダウンロードされるのでしょうか。おそらく、「検索」「おすすめ機能」といったIチューンズ・ストアが提供する機能を利用して、このバンドのアルバム紹介画面に偶然たどり着いた人がいるわけです。そして、その内の興味をもった数十人(数百人?)が30秒間の楽曲試聴を経て、「このサウンドは面白い。ちゃんと聴いてみよう」と購入してくれたと推測しています。つまり、音楽配信には、未知のコンテンツとの出会いを演出する機能(検索、おすすめ、試聴)があり、その出会いがユーザーにとって満足できるものであれば、高い確率で購入してくれるという特徴があるのです。このバンドは非常に高度な音楽性を持っており、ボサノバ曲と筝などの和楽器を融合させ、独特の世界観を作り出しています。和風ボサノバというニッチでマニアックな音楽ジャンルではあるのですが、そのような曲に反応する人との出会いの瞬間、その人たちの耳を満足させられるだけの質(音楽性など)を兼ね備えたコンテンツだからこそ、クリックして購入してくれたとも考えられます。そして、世界21ヶ国での発売という点も大きなポイントです。日本だけでの展開では、それこそ本人、友人、家族程度しか購入しなかった可能性もあります。Iチューンズ・ストアという世界に向けて開かれた販路があったらからこその数字であり、梅田氏のロングテールについての記述を裏付ける結果となりました。東京の一無名セミプロバンドのアルバムにもたらされた182曲というダウンロード実績は、Iチューンズ・ストアのロングテールービジネスを垣間見せるものであると同時に、このネット時代において、良質なコンテンツを提供することのできる事業者や個人にとって、大いなる可能性を秘めた数字と見ることができるのです。
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