アーカイブ

『方丈記』の英訳に挑む

南方の八年に及ぶイギリス滞在のなかで起こったさまざまな出来事、あいかわらずの彼の奇行・蛮行、さらに帰国後の粘菌研究などについては、すでに彼の伝記のなかで詳しく紹介されているので、ここではとくに触れないことにする。南方の英語だけに着目した場合、まず特筆すべきは、彼がロンドン滞在中に時間を見つけては行なっていた筆写学習の証、大型ノート五三冊分のいわゆる「ロンドン抜書帳」であろう(その一部が南方熊楠記念館に展示されている)。これは、のちの論考のための貴重な資料となったばかりでなく、おそらくは、博物学・民俗学関連表現を網羅した、南方だけの英語表現辞典になったと思われる。もちろん、筆写それ自体が立派な語学修業であったことは言うまでもない。そして、何と言っても注目すべきは、ロンドン大学事務総長フレデリックーヴィクター・ディキンズとの共同作業によって完成した『方丈記』の英訳である。この二人の共同作業が、どのような形で進められたかは定かではないが、共訳者として南方のほうが最初に名前を記されていること、のちにこの作品がディキンズ一人の訳業として出版されたことを不服とした南方本人が「小生がこの訳の主要なる作者」(「履歴書」)だと主張していることを考え合わせると、南方が訳したものをディキンズが直していくような形での訳業ではなかったかと推測される。
(関連)
オンライン英会話スクール選びの重要度

オンライン英会話教室選びの怪情報

オンライン英会話教室の魅惑